オートデスク (Autodesk)が開発、販売する『Maya』は、ハイウッドの超大作映画や人気TVゲームの制作に使用されている3DCG制作ツールです。
この『Maya』ですが、非常に高機能でプロフェッショナル向けの製品という事もあり、価格は決して安くはありません。
毎日使う仕事道具として捉えると、値段相応、いや、それ以上の価値があると思えるのですが、コストは重視するべきで、当然購入する際は、使用目的や運用方法などを考慮した上で無駄な出費は抑えたいのが本音。
そして、願うことなら最大限有効に活用し、購入した価格以上の成果を出す事が出来たら最高!という感じでしょう。
TVゲーム制作に特化し機能を省いた「Maya LT」は、フルスペックの『Maya』に比べて安価だった事もあり、多くのゲーム開発者に人気がありましたが、2022年12月で販売終了してしまいました。
その「Maya LT」に変わる製品としてAutodeskから『Maya Creative』がリリース。
『Maya Creative』は、安価でありながら『Maya』の機能が”ほぼ”そのまま使える製品として大幅に進化しました。
では、『Maya』と『Maya Creative』のどちらを購入すべきなのでしょう。
そこで本記事では、用途・使用頻度などをベースに『Maya』と『Maya Creative』を比較し、コスト的にどちらがベストな選択なのかを解説。
これからMayaを購入する際の参考になればと思います。
『Maya』と『Maya Creative』の違い
『Maya』と『Maya Creative』
どちらもオートデスクが開発、販売する3DCGソフトウェアである事に違いはありません。
出来る事も“ほぼ” 同じです。
では、『Maya』と『Maya Creative』とでは、何が違うのでしょう。
『Maya』とは
「Maya」は、3DCG作品を制作する機能が備わった、プロフェッショナル向けのDCCツール(Digital content Creation Tool)です。
3Dモデリング、アニメーション、レンダリングなど、3DCG制作に必要な機能が揃った総合ソフトウェアとして、国内外のハリウッドの超有名映画作品やドラマ作品、人気TVゲームの制作スタジオで使用されています。
仕事道具としての用途を考えている。総合的に3DCGの技術を身に着けたい。そして何と言っても予算的に問題ないのであれば、フルスペックの『Maya』を選ぶ事に迷う理由は無いでしょう。
『Maya Creative』とは
「Maya Creative」は、ゲーム制作をメインターゲットにMAYAの機能を限定した「Maya LT」の後継となる製品です。
「Maya LT」は、ゲーム制作に必要な機能に重きを置いた製品の為、レンダリング周りの機能は完全に省かれていましたが、後継製品となる「Maya Creative」は、そのレンダリングを含む「Maya」の機能を”ほぼ”そのまま使用することができます。
つまり、「Maya LT」は、ゲーム制作に必要な機能だけに限定した”簡易版”製品だったのに対して、「Maya Creative」は、映画やテレビなど映像制作にも利用可能なプロフェッショナルツールセットとして大幅にアップグレードされた製品となります。
■Maya LT と Maya Creative の概要
Maya LT | Maya Creative |
---|---|
レンダリング機能が省かれ、ゲーム制作に必要な機能のみに限定した「Maya」の廉価バージョン。 | モデリング、アニメーション、そしてレンダリングも可能。低価格で使える「Maya」の“ほぼ”フルバージョン。 |
『Maya Creative』で出来ない事
『Maya Creative』は『Maya』の “ほぼ” 全ての機能が使えます。
この “ほぼ” に当たる機能は何を指すのかが気になりますよね。
契約後に最も必要としていた機能が使えなかったとしたら一大事です。
ここはしっかり確認しておきましょう。
■『Maya Creative』で省かれた機能
“ほぼ” 全ての機能が使えると言いつつ、ダイナミクス・エフェクト関連は、全滅状態。
近年の高品質3DCG制作に欠かせない存在になりつつあるAdobe Substanceプラグインに非対応なのは残念に思われる方も多いのでは?
そして最も懸念材料となるのが、「SDKを使用してカスタムプラグイン作成」「サードパーティのプラグインとツール」の箇所。
オートデスクが作成したもの以外のプラグインやツールは使用できません。
つまり、外部ツールや内製ツールを活用する前提での運用にはむかないという事。
『Maya Creative』が、実作業で使えるか否かの難しい点がここにあります。
■『Maya Creative』で省かれた主な機能
■モデリング・UVテクスチャリング関連 |
ペイントエフェクト |
Adobe Substanceプラグイン |
■レンダリング関連 |
MAYA トゥーンシェーダー |
ベクターレンダラー |
■ダイナミクス・エフェクト関連 |
Bifrost プロシージャルエフェクトプラットフォーム |
Bifrost 流体シミュレーションと BOSS |
XGen |
インタラクティブグルーミングツールセット |
Maya 流体工フェクト |
Maya Fur |
Maya nHair |
Maya nParticle |
Maya nCloth |
リジッド ボディ・ソフトボディダイナミクス |
Bullet Physics |
■シーンデータ及びファイルフォーマット関連 |
Maya 向け Unreal Live Link プラグイン API |
■スクリプト・プラグイン関連 |
SDKを使用してカスタムプラグイン作成 |
Microsoft .NET API |
PyMel のインストールオプション |
サードパーティのプラグインとツール |
|
『Maya』と『Maya Creative』の購入方法
『Maya』と『Maya Creative』では購入方法が全く異なります。
『Maya』の方だけでも購入方法は複数あるので、それぞれのメリット・デメリットを把握する事が非常に大事になってきます。
それに加えて『Maya Creative』は、これまでのサブスクリプションライセンスとは全く異なる購入方法なので、こちらもシッカリ仕組みを理解した方が良いでしょう。
『Maya』の購入方法
「MAYA」を購入するには
Autodesk公式サイト 又は Autodesk公認販売パートナー
どちらか一方で申し込み及び手続きする必要があります。
■Autodeskの公式サイトで購入するメリット
○選べるライセンス契約期間
Autodesk公認販売店との違いは、契約の期間が「1年契約」の他に「月額契約」「3年契約」と、複数の選択肢から選べる事。
「1年契約」を毎年3年間継続するより、「3年契約」で契約する方が最大約 10% お得になります。
○購入後すぐにダウンロードして使用できる
Autodesk公式サイトであれば、24時間365日いつでも購入手続き可能で、即ダウンロード・インストール、ソフトウェアを使用する事ができます。
更新手続きも、同サイトにログインし数回クリックするだけで完了します。
■Autodeskの公式サイトで購入するデメリット
メリット?・デメリット?なのか迷いますがこの項目に記載します。
オートデスク公式オンラインストア及び販売パートナーは独立しているので価格を自由に決定できますが、オートデスク公式オンラインストアのサブスクリプション価格は基本的に、オートデスクの希望小売価格のまま。
対して販売パートナーは、独自の価格を設定している場合があります。
(公式よりも安いか高いかは確認が必要)
ただし、オートデスク公式オンラインストアは年に数回、割引キャンペーンを開催するので、そのタイミングが購入のチャンスかもしれません。
■Autodesk販売パートナーで購入するメリット
MAYAを認定販売店で購入するメリットは、販売店独自のセミナーやコンテンツ、サポートが利用できる事。
チーム・組織や法人でMAYAを購入する場合は、細かなサポートが受けられ、販売パートナーによっては他社製品の相談もできる。
■Autodesk販売パートナーで購入するデメリット
認定販売店で購入するデメリットは、Autodeskと購入者の間に別の手続きが挟まれること。
契約・更新の手続きは、Autodesk公式サイトで購入する場合と違い、メール等を介した見積書のやり取り(電子印鑑を捺印して返送したり)が必要で正直面倒。
『Maya Creative』の購入方法
Maya Creativeのライセンスは、ソフトウェア毎に個別で契約するサブスクリプションでは無く、「Autodesk Flex」が使われます。
「Flex」は、使用期間に料金を払うサブスクリプションと違い、必要なときに必要な日数だけ、必要なソフトウェアを使用できる、従量課金制の購入方法です。
ソフトウェア毎に定められた1日に使用するトークン数を消費する事で、「Maya Creative」を含む、さまざまなAutodesk製品を利用できます。
1日に消費するトークン数は、ソフトウェア毎に違います。
製品名 | 一日に消費するトークン数 |
---|---|
Maya Creative | 1 |
Maya | 6 |
普段は「Maya Creative」を使いトークンを節約し、「Maya」の機能が必要な日は「Maya」を使用する。
そんな運用も可能です。
Autodesk Flex ライセンスの使用期限
購入したトークンの使用期限は、購入日から一年間です。
注意点として、残ったトークンは繰り越されないので、予め購入するトークンは、1年間で使い切れる量にする事。
追加のトークンは、必要なときにいつでも購入できます。
■Autodesk Flex トークンの価格
Flex | 価格(円) | 1トークン当たりの費用 |
---|---|---|
100トークン | ¥39,600 | ¥396 |
500トークン | ¥198,000 | ¥396 |
1000トークン | ¥396,000 | ¥396 |
5000トークン | ¥1,930,500 | ¥386.1 |
10000トークン | ¥3,762,000 | ¥376.2 |
|
『Maya』と『Maya Creative』のコスト
まず『Maya Creative』の従量課金制の購入方法「Autodesk Flex」の説明から。
「Flex」は、1日毎にソフトウェアを使用した分のトークンを消費します。
事前に購入する数によって多少変動はありますが、1トークン当たりの価格は 396円
そして、『Maya Creative』が1日に消費するトークンの数は 1
この情報を踏まえて、『Maya』と『Maya Creative』のコストを比較してみたいと思います。
使用日数でコスト比較
■MAYAシングルユーザーサブスクリプションライセンス 期間別の価格
ライセンス期間 | 1ヶ月 | 1年間 | 3年間 |
---|---|---|---|
価格 | 36,300円(税込) | 286,000円(税込) | 772,200円(税込) |
『Maya』のシングルユーザーサブスクリプションの1年契約の価格は 286,000円(税込)
オートデスクが設定する価格に変更が無ければ、毎年同じ価格で更新する事になります。
少しでもコストを抑える方法として、オートデスクのサブスクリプションライセンスは、長期契約の方がお得な価格設定になっているので、事前に3年以上使う事が決まっているなら、3年契約をオススメします。
例:
シングルユーザーサブスクリプションの1年契約を3年継続した場合
286,000円 × 3年= 858,000円
シングルユーザーサブスクリプションの3年契約
772,200円
その差 85,800円 結構大きいですよね。
■Maya Creative 使用日数ごとの価格
Flex トークン | 1ヶ月(30日) | 1年間(365日) | 3年間(1095日) |
---|---|---|---|
1トークン(396円) × 日数 | 11,880円 | 144,540円 | 433,620円 |
『Maya Creative』が1日に消費するFlex トークンの数は 1
Flex 1トークン当たりの価格は 396円
つまり、396円 に 使用日数 を掛けた値が『Maya Creative』の価格になります。
例:
「週末は使わない」と想定し、1年の平日のみ240日使用した場合
396 × 240 = 95,040円
かなりコストを抑えられます。
他のオートデスク製品も使用可能
Flexは、『Maya』を含むAutodeskの主要製品の多くで利用できます。
ソフトウェア毎に契約・購入する必要はありません。
使用したソフトウェアのトークン数を消費して、無くなるまで利用できます。
あらゆるエンターテインメント作品の制作に適したAutodeskのソフトウェアコレクション『Media & Entertainment Collection』
この『Media & Entertainment Collection』に含まれるソフトウェアも、「毎日は必要ない。だけど数日だけ使いたい」そんな使い方ができます。
■『Media & Entertainment Collection』に含まれるソフトウェアの一日に消費するトークン数
製品名 | 1日に消費するトークン数 | 一日当たりの費用 |
---|---|---|
MAYA | 6 | ¥2,376/日 |
3ds Max | 6 | ¥2,376/日 |
MotionBuilder | 6 | ¥2,376/日 |
Mudbox | 1 | ¥396/日 |
ReCap Pro | 1 | ¥396/日 |
チームで使用する場合
・普段はMAYAや3dsMaxでモデリングしているけど、部分的にMudboxでスカルプティングしたい。
・デザイナーが作成した問題のあるモデルデータを、確認の為にプログラマーが普段使わないMAYAを起動する。
このような状況って結構ありますよね。
「Autodesk Flex」は、チーム運用に最適なライセンスかもしれません。
Flexで購入したトークンは、使用する製品毎に割り当てる必要は無く、Autodeskアカウントのチーム管理画面でFlexを利用するユーザーを指定するだけ。
指定されたユーザーは、使用したい製品をインストールし、サインインして起動すれば利用できます。
また、指定できるユーザー数に制限は無く、Flexに対応する全ての製品を使用できます。
購入したトークンをチーム内でシェアする
そんな運用イメージでしょうか。
|
「Flex」の購入窓口
『Maya Creative』は、「Autodesk Flex」のトークンを購入、そのトークンを消費する事で利用可能になるわけですが、その Flexトークン の購入方法について。
日本でFlexライセンスの提供は特定の販売パートナー経由のみになっています。
つまり、オートデスク公式オンラインストア を介して契約しても『Maya Creative』は使えません。
必ず特定の特定の販売パートナーから購入する必要があります。
「Flex」のより詳しい解説は、別の記事にまとめたので、そちらをご覧ください。
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まとめ
『Maya』と『Maya Creative』のどちらを購入すべきか。用途・使用頻度の違いによるコストの解説をしました。
『Maya Creative』は、安価に利用できる『Maya』として、購入対象がTVゲーム開発だけでなく、映像作品など様々な3DCG制作に使用できます。
しかし、この『Maya Creative』は、何方も紛うことなきAutodeskのMayaではあるのですが、『Maya』とはライセンス形態や購入方法が全く異なる為、購入する際に検討を要する点が幾つかあります。
・使用頻度はどのくらいか?
・長期間使う予定なのか?
・使用目的は何か?
・省かれた機能はなくても問題無いのか?
・個人で運用?チームで運用?
・公式ストアで購入する?販売パートナー経由で購入する?
・購入・更新の手続きの手間は?
etc
これらを事前にしっかり検討した上で購入手続きすることをおすすめします。
使用目的や運用方法、契約方法の違いで、高コストパフォーマンスにもなれば、逆に予算の無駄遣いにもなり得ます。
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