liquidjumper MAYA Autodesk 『MayaLT』の後継『Maya Creative』を徹底解説

Autodesk 『MayaLT』の後継『Maya Creative』を徹底解説

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ゲーム制作をターゲットにしたMayaの機能限定バージョン「Maya LT」が2022年12月で販売終了となります。

その「Maya LT」に変わる製品としてAutodeskから新しい製品『Maya Creative』がリリースされました。

「Maya LT」では省かれていたレンダリング機能が使えるようになり、ゲーム制作だけでなく、映像制作にも使用可能に。

「Maya」で出来る事は”ほぼ”使えると言って良いほどの大幅なアップデートとなりました。


そこで本記事では、Autodesk 『MayaLT』の後継『Maya Creative』について詳しく解説したいと思います。

これから「Maya」の購入を検討している方は勿論、現在「MayaLT」を使用していて、販売終了後の移行先に迷っている方、又は、「MayaLT」の機能だけでは物足りないと感じている方。

更に「Maya Creative」で採用しているライセンス形態、「Autodesk Flex」の解説もしてるので、コスト面の見直しを考えている方も含め。

是非参考にしてみてください。





Maya Creativeとは

「Maya Creative」は、ゲーム制作をメインターゲットにMAYAの機能を限定した「Maya LT」の後継となる製品です。

「Maya LT」は、ゲーム制作に必要な機能に重きを置いた製品の為、レンダリング周りの機能は省かれていました。

しかし、後継製品となる「Maya Creative」は、そのレンダリングを始めとして「Maya」の機能が”ほぼ”そのまま利用可能。

つまり、「Maya LT」は、ゲーム制作に必要な機能だけに限定した”簡易版”製品だったのに対して、「Maya Creative」は、低価格で映画やテレビなど映像制作にも利用可能なプロフェッショナルツールセットとなりました。


■Maya LT と Maya Creative の概要

Maya LTMaya Creative
レンダリング機能が省かれ、ゲーム制作に必要な機能のみに限定した「Maya」の廉価バージョン。モデリング、アニメーション、そしてレンダリングも可能。低価格で使える「Maya」の“ほぼ”フルバージョン。

「MAYA」と「Maya Creative」の機能比較

「MAYA」と「Maya Creative」の機能比較
画像:Autodesk公式HP


多くの機能が省かれていた「Maya LT」に対して、殆どの機能が使える「Maya Creative」の比較対象は、「MAYA」の方が適しているでしょう。

では「MAYA」の何が出来て何が出来ないのか、機能比較をしてみたいと思います。

モデリング・UVテクスチャリング

モデリング・UVテクスチャリング に関しては、「MAYA」の機能が殆ど利用できます。

■使えない機能

「ペイント エフェクト」と、「Adobe Substanceプラグイン」


Substanceアーカイブ(sbsar形式)のファイルを直接読み込み、自動でシェーダーネットワークを構築してくれるSubstanceプラグインが使えないので、「Adobe Substance」をワークフローに組み込んでいる場合は注意が必要かもしれません。


勿論、Substanceで作成し出力した画像ファイル(TGA,PNGなど)は読み込めるので、運用上それで問題なければ気にする必要は無いでしょう。

■「Maya Creative」「Maya」モデリング・UVテクスチャリング関連の比較表

Maya CreativeMaya
メッシュ、サーフェス、カーブの包括的なモデリングワークフロー
モデリングツールキットの全機能
スカルプティングツールセット
シンメトリモデリングワークフロー
ポリゴンの削減とリトポロジのワークフロー
高度なブーリアンワークフロー
OpenSubdiv
ペイントエフェクト
包括的な UV 編集ワークフロー
UV ツールキットの全機能
Unfold3D の統合
UVセットに完全対応
3D テクスチャ ペイント
2D および 3D のプロシージャルテクスチャ
PSDファイル対応
マップの転写
Adobe Substanceプラグイン

アニメーション・モーショングラフィック

アニメーション・モーショングラフィック に関しては、「MAYA」と「Maya Creative」で差はありません。フル機能使えます。

■「Maya Creative」「Maya」アニメーション・モーショングラフィック関連の比較表

Maya CreativeMaya
包括的なキャラクター アニメーショ ワークフロー
グラフエディタの全機能
ドープシート
ノンリニアタイムエディタ
カメラシーケンサ
無制限のアニメーション レイヤ
Blue Pencil の 2Dワークフロー
ドリブンキーの設定ツール
エクスプレッション エディタ
編集可能なモーション軌跡
ゴーストエディタ
スケルトンとスキニングの完全なツー ルセット
HumaniK フルボディアニメーション システム
クイックリグ
コンストレイントシステムの全機能
デフォーマの全機能
コンポーネントタグと減衰に対応
リグの並列評価
GPU による高速デフォメーション
キャッシュされた再生
パフォーマンスプロファイラーと評価 ツールキット
MASH モーショングラフィックスツールセット
3D テキストのワークフロー
スケーラブルベクトルグラフィックス (SVG)

レンダリング

「Maya LT」との大きな差が、このレンダリング機能。

「Maya Creative」はレンダリングも行えるので、映像制作のツールとして選択肢に入るでしょう。

■使えない機能

「Maya トゥーンシェーダ」「ベクターレンダラー」

「Maya」のメニューから「トゥーンシェーダ」の項目が一切無くなっているので、この機能を利用している人は注意が必要。

「Maya トゥーンシェーダ」
「Maya」のメニュー

■「Maya Creative」「Maya」レンダリング関連の比較表

Maya CreativeMaya
Arnold レンダラー
Maya ソフトウェア レンダラー
ハードウェアレンダラー
レンダリング設定
インタラクティブレンダリングを使用したレンダービュー
ハイパーシェード
ShaderFX
カラー管理
MAYA トゥーンシェーダー
ベクターレンダラー

ダイナミクス・エフェクト

「Maya Creative」最大の懸念となるのが、この項目でしょう。

ダイナミクス・エフェクト関連の機能は一掃されています。

唯一「Bifrost プロシージャル エフェクト プラットフォーム」の読み取りだけは可能ですが、作成は一切できません。

Mayaでダイナミクス・エフェクトの作成を計画している場合は注意してください。

■ゲーム制作への影響は少ない?

ゲーム制作の場合はUnreal EngineやUnityなど、ゲームエンジン内で処理される部類のものと考えれば、それほど影響は無いのかなとも思います。

それでも、「リジッドボディ/ソフトボディ ダイナミクス」は残してほしかったなと個人的には思いますが。

■「Maya Creative」「Maya」ダイナミクス・エフェクト関連の比較表

Maya CreativeMaya
Bifrost プロシージャルエフェクトプラットフォーム(読み取り専用)
Bifrost プロシージャルエフェクトプラットフォーム
Bifrost 流体シミュレーションと BOSS
XGen
インタラクティブグルーミングツールセット
Maya 流体工フェクト
Maya Fur
Maya nHair
Maya nParticle
Maya nCloth
リジッド ボディ・ソフトボディダイナミクス
Bullet Physics

シーンデータ及びファイルフォーマット

シーンデータの保存や書き出し、ファイルフォーマットに関しては、「Maya」と変わりません。

保存する際のファイルフォーマットも「Maya」と同じ「Maya Ascii(.ma)」「Maya Binary(.mb) 」なので、「.mlt」という特殊なフォーマットだった「Maya LT」から改善された点と言えるでしょう。

■使えない機能

Unreal Engineと同期できる「Unreal Live Link プラグイン」には未対応です。

Unreal Engineでゲームのカットシーン制作する際に、重宝してる人にとっては不自由に感じる部分かもしれません。

■「Maya Creative」「Maya」シーンデータ及びファイルフォーマット関連の比較表

Maya CreativeMaya
USD for Maya
ノードエディタ
ファイルリファレンス
Alembic API 対応
ファイルパスエディタ UI
Maya Ascii (.ma)、Maya Binary (.mb) ファイルを開く・保存
Maya LT(.mit) ファイルを開く
[Unity に送信]
[Unreal に送信]
[Mudbox に送信]
[MotionBuilder に送信]
[Flame に送信] を使った読み込み・書き出し
3ds Max に送信 ゲームエクスポータ
ATOM アニメーションの書き出し読み・込み
Maya 向け Unreal Live Link プラグイン API

スクリプト・プラグイン

Maya Creativeは、「MELスクリプト」 そして 「Pythonスクリプト」 をサポートしています。

「PySide」も使えるので独自ツールのUIも問題なく作成できます。

オープンソースのPython ライブラリ「PyMel」については、表に記されているように標準では未対応になっていますが、自身でインストールすれば、問題なく使用することができます。

■外部プラグイン作成・サードパーティープラグイン未対応

Maya Creativeを運用する際に最も重要となるのがプラグイン関係だと思います。

Maya Creativeは、MayaのSDKを使用したプラグインの作成ができません。

そして、更に重要なのが「サードパーティーのプラグイン」を使うことが出来ないという事。

例えば、プラグイン自体はチームのメンバーが「Maya」で作成できたとしても、Maya Creative ユーザーの他メンバーは、そのプラグインを使用できない。そのような事が想定できます。

当然、世の中に出回っている便利なプラグインは、公式販売代理店が作成したものも含めて使うことはできません

使えるのはAutodeskが作成したプラグインのみです。

ここはなんとかして欲しいですね。

■「Maya Creative」「Maya」スクリプト・プラグイン関連の比較表

Maya CreativeMaya
MEL スクリプト
Python スクリプト
PySide
独自のツールの UI をカスタマイズ
SDKを使用してカスタムプラグイン作成
Microsoft .NET API
PyMel のインストールオプション
サードパーティのプラグインとツール

■PyMelのインストール方法

PyMelのインストール方法は、Autodesk公式のヘルプページに掲載されいます。


Windowsの場合:

C:\Program Files\Autodesk\MayaCreative2023\bin に移動し以下のコマンドを実行

mayapy -m pip install "pymel>=1.3.*,<1.4.*"


macOSの場合:

/Applications/Autodesk/maya<VersionNumber>/Maya.app/Contents/bin に移動し以下のコマンドを実行

sudo ./mayapy -m pip install "pymel>=1.3.*,<1.4.*"

Maya Creative対応OS

「Maya Creative」がサポートしてるOSは、「Windows」及び「Mac OS X」のみです。

「Linux」はサポートしていません

Maya Creativeのライセンスと価格

Maya Creativeのライセンスは、ソフトウェア毎に個別で契約するサブスクリプションでは無く、「Autodesk Flex」を採用しています。

「Flex」は、使用期間に料金を払うサブスクリプションと違い、必要なときに必要な日数だけ、必要なソフトウェアを使用できる、従量課金制の購入方法です。

ソフトウェア毎に定められた1日に消費するトークン数を消費する事で、「Maya Creative」を含む、さまざまなAutodesk製品を利用できます。


消費するトークン数はソフトウェア毎に違います。

例えば「Maya Creative」が一日に消費するトークン数は[1]

対して「Maya」が一日消費するトークン数は[6]

なので、普段は「Maya Creative」を使用し、「Maya」の機能が必要な日だけ「Maya」を起動する。

このような運用も可能です。

■コストの具体例

「Flex」の1トークンは、購入する数によって多少変わりますが、基本的に396円。

「Maya Creative」が一日に消費するトークン数は[1]なので、1年の平日のみ240日使用した場合

396 × 240 = 95,040円

因みに、360日使用した場合は、144,540円になります。


Mayaのシングルユーザーサブスクリプションの1年契約の価格が 286,000円 なので、それと比べると破格と言えるでしょう。

「Flex」のより詳しい解説は、別の記事にまとめたので、そちらをご覧ください。




※日本でのFlexライセンスの提供は特定の販売パートナー経由のみ。

「Maya Creative」をお奨めできる人

ゲーム制作を目的にMayaの廉価版「Maya LT」を使用していた人にとって、大幅に機能アップした「Maya Creative」は、確実に移行して問題ない製品です。

加えて、「Maya LT」では省かれていたレンダリング関連も使えるようになった事で、映像関係のユーザーも採用を検討する価値が有るかと。

ただ、運用に際しての問題点もあります。

・ダイナミクス・エフェクト

・外部プラグインが使えない

ここに関しては、実際のワークフローで重要になる部分なので、本当に大丈夫なのかは一考が必要でしょう。

外部ツール及び内製ツールを多く使用しているチーム・企業だと、致命的になりかねないので、慎重に検討する事をオススメします。

それらの点が問題ないという事であれば、柔軟に運用できる従量課金制の「Flex」でコストを抑えられる事も加味して、メリットが大きい製品と言えます。


まとめ

Autodesk 『MayaLT』の後継製品『Maya Creative』の解説でした。

ゲーム制作に特化した機能しか使えなかった「Maya LT」から、レンダリングも可能になり映像制作ユーザーも対象になった「Maya Creative」

「Maya」の殆どの機能が使えるので、例えば「ダイナミクス周りは殆ど触ってない」とか、現在の使用状況を見直して、サブスクリプションから「Flex」に切り替え、又は併用を考えてみるのも良いかもしれません。

何れにしても、「MayaLT」は2022年12月で販売終了なので、既存ユーザーは「Maya Creative」又は「Maya」への移行作業はお早めに。

■「Maya」の殆どの機能が使える

Maya LT:レンダリング機能が省かれ、ゲーム制作に必要な機能のみに残した「Maya」の廉価バージョン。

Maya Creative:モデリング、アニメーション、そしてレンダリングも可能。低価格で使える「Maya」の”ほぼ”フルバージョン。

■使えない機能

「ペイント エフェクト」
「Adobe Substanceプラグイン」
「Maya トゥーンシェーダ」
「ベクターレンダラー」
「ダイナミクス・エフェクト」全般
「Unreal Live Link プラグイン」
「SDKを使用したプラグインの作成」
「Microsoft .NET API」
「サードパーティーのプラグイン」

■ライセンスは従量課金制「Flex」

必要なときに必要な日数だけ、必要なソフトウェアを使用できる、従量課金制なので、コスト面でメリットが大きい。




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